地域医療を支える開業医の高齢化問題。M&Aアドバイザーが語る、「医業承継」が果たす役割

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団塊世代が75歳以上となり、日本が超高齢化社会に突入する2025年を前に、問題となっている高齢経営者の後継者探し。医療機関においても、地域の医療を持続させていくため、医業承継が注目を集めています。

エムステージマネジメントソリューションズでは、医療機関の譲渡(売却)先と譲受(買収)先をマッチングする「医業承継サポート」を提供しています。医業承継を取り巻く現状について、代表取締役 田中さんにお話を伺いました。

(株)エムステージマネジメントソリューションズ 代表取締役 M&Aアドバイザー 田中さん
エムステージでの医師紹介事業部長を経て、2019年、医業承継、医療経営支援事業を行うエムステージマネジメントソリューションズ(以下、MMS)設立。代表取締役就任。

――長年、医療機関の採用支援に取り組んでこられた田中さんですが、MMSを設立し、医業承継に取り組みはじめたきっかけについて教えてください!

社会的な少子高齢化は医療の担い手不足にもつながっており、特に医療機関の少ない地方においては、診療所の閉院によって行き場を失う患者が生まれることに課題感を持っていました。
これから開業される先生においても、少子高齢化を背景に経営環境が厳しくなっているため、イニシャルコストを抑えて、スタッフや患者様も既に確保できている中で開業できる承継開業は非常に大きな価値があり、やるべき事業だと思っていました。

医師紹介事業を行う中で、医師からの「承継開業も検討したい」という多くの相談を頂いていたことも、事業化の後押しとなりました。

――医師の方からのご要望も多かったのですね。実際にはじめてみていかがでしょうか?

売り手側のニーズについては、「後継者がいない」という問題だけでなく、さまざまな承継のご相談を頂いています。例えば院長の体調不良、資金的な経営難、介護などの家庭事情による引っ越し、親の診療所を継いだが本当は希望していなかった、といったものがあります。開業したものの、自分に経営は合っていないと気づき、売却を希望されるケースもあります。

医師の職業選択の自由が広がってきたことによって、医師としてどう生きるか、現在はさまざまな選択が可能になってきていると思います。地域医療への貢献だけでなく、こうしたお一人お一人の抱えるワークライフの悩みや課題も解決できることを実感して、医業承継の意義を更に強く感じています。

医業承継のメリット(サービス資料より)

――始めてみて、さらにその意義を感じていらっしゃるのですね!よい承継のために気を付けておくことは何かあるのでしょうか。

買い手側については、医師になると同時に経営者になるという意識を持って、譲受後のシュミレーションをしっかりと行っておくことです。新規開業と比較すると承継開業は既に揃っているものも多いですが、それでもやはり「経営」は大変です。承継だから必ず成功するというわけではありません。
専門家を入れて事業計画をしっかりと立て、分析・シュミレーションしておく必要があります。

――事業計画やシュミレーション…。なかなか勤務医から開業される際には難しそうですね。

もちろんご自身だけでは難しいですので、例えば弊社の場合は、こちらで事業計画の策定やシュミレーションを行いますし、医業に強い税理士や社労士といった専門家も紹介しています。

――売り手側の方が気を付けておくことについては、いかがですか。

売り手側については、承継のタイミングを逃さないよう、早めに情報収集を始めることです。
将来なんとなく、誰かに承継してもらわないといけないだろう、と考えている方はいらっしゃいますが、いざ具体的に考えないといけない時に慌てて動き始めても、相手がいることなのでタイミングが合うかは分かりません。リミットが発生しますので、世の中には結局引き継げなかったというケースもあるようです。

また、例えば負債があるようなケースですと、そのままではなかなか買い手が現れません。そうした場合、負債を圧縮する引継ぎ方のスキーム構築などが重要になってきますが、そうしたスキーム構築ができるかどうかも、間に入るアドバイザー次第です。
早めの情報収集で、タイミングを逃さないこと、信頼できるパートナーを見つけておくことが大切です。

――実際にはどのようなご相談があるのでしょうか。

2つほど事例を紹介します。
ひとつは、『負債の残る状態で理事長の余命がせまり、早期に診療所の譲渡が必要となった事例』です。
この診療所は開業したばかりでまだ負債が残っている状態でしたが、病気により理事長の余命がせまっている状況でした。亡くなられた場合は家族や経営陣に負債が残りますし、潰れてしまえばスタッフの雇用もなくなり、地域の患者も行き場を失ってしまいます。
非常に短期間で譲渡する必要のある案件でしたが、負債があるためそのままでは買い手がつきません。そのため負債を圧縮するスキームを構築することで、譲受した先生が負債なく経営をスタートできる状態を整備。結果、意欲ある先生に引き継ぐことができました。

もうひとつは、『経営の好調な個人病院の経営権を譲渡した事例』です。
先人から受け継ぎ、多くの地域の患者に信頼され、経営状態は非常に好調でしたが、これから10年先の中・長期を見据えた時に、経営は厳しくなるだろうと感じていらっしゃいました。
ご自身では地域のニーズに合わせた病床転換などのダイナミックな経営戦略を描いていくことは難しいとの思いから、将来に備えて経営のプロがいる、ノウハウがある大手グループに入ることにされました。経営権だけを移し、将来への精神的な負担を減らした上で現在も変わらずに診療を続けていらっしゃいます。
また診療所には労務体制の整っていないところがあるというリスクがありましたが、大手法人の強みを生かして体制整備なども実施し、従業員の就業環境がよりよくなることで、さらに経営も安定するようになりました。

その他にも、「残りの人生を、地方で人としても医師としても豊かに過ごしたい」と希望する医師のIターンマッチングの事例や、「地域の困った診療所があれば、地域貢献として譲受していきたい」という思いをお持ちの医師による譲受の事例など、さまざまなケースがあります。
ひとつとして同じ案件はありませんが、どれも大きな意義があり、強い思い入れがあります。

――今後、『医業承継サポート』で成し遂げたいことや、ビジョンについて教えてください

地方の地域医療を支えるために、U・Iターンで故郷や好きな地方で開業したいと考える先生と、地域での医業を引き継いでほしい医師のマッチングを強化したいと思っています。

承継後の経営面や運営面のサポートも強化していく予定です。
例えば、集患において現在はネットの力は欠かせません。エムステージグループには、制作・マーケティング活動を専門に担うエムステージコミュニケーションズがありますので、連携することで医療機関のHP制作やマーケティング支援なども行っていけたらと考えています。
承継後の人材採用も、エムステージの医師紹介や事務職紹介と連携して支援していますが、実際に経営を担う事務長職については紹介だけでなくアウトソーシングサービスの展開も検討中です。

地域の医療が継続することで、地域の患者―売り手医師ー買い手医師のwin-win-winを実現できる医業承継を、グループの力を集結して今後も積極的に進めていきます。

医業承継サポート:https://shoukei.mplat.jp/